キャバ嬢のみなさまは、「ネット誹謗中傷」をご存知でしょうか?
インターネット上には、ネット掲示板や個人のSNSなど、さまざまな意見発表の場があります。
そのような場所では、どのような人でも匿名で投稿できるので便利ですし、
暇つぶしなどにも良いのですが、ときには謂れのない誹謗中傷被害を受けることがあります。
特に、キャバ嬢などの水商売をされている方の場合、
「ホスラブ」などの水商売専門のネット掲示板で嫌がらせや、プライバシー侵害を受けることが多いので、注意が必要です。
今回は、キャバ嬢がホスラブなどのネット掲示板で悪口を書き込まれたときの対処方法をご紹介します。
それでは行ってみましょう。
1.ネット掲示板、ホスラブとは
キャバ嬢の方が誹謗中傷被害を受けやすいネット掲示板に「ホスラブ」があります。
ネット掲示板やホスラブと言われてもよくわからない、という方のため、まずはこうしたサイトについて、簡単に説明をします。
外部リンク
ホストラブ
1-1.ネット掲示板とは
ネット掲示板とは、ネット上のサイトにさまざまなスレッドが立っていて、基本的に誰でも自由に投稿ができる場所です。
たとえば、2ちゃんねる(今は5ちゃんねるに名前が変わっています)や爆サイなどが有名です。
地域ごとのスレッドや商品、サービス、お店の批評、メーカーや会社のスレッドなど、
ありとあらゆる種類のトピックがあって、ユーザーが匿名で投稿しています。
ホスラブもアレですけど爆サイの民度の低さは、なかなかのモンです。
1-2.ホスラブとは
ホストラブ(ホスラブと呼ばれることが多いです)は、そんな中でも水商売の人に向けたネット掲示板です。
オープンしたのは2001年と古く、もともとはホストクラブ専門のサイトでした。
今は、ホストクラブだけではなく、
- 経営者
- ホスト
- キャバ嬢
- キャバクラの客
- その他の風俗嬢
などが広く利用しています。
この記事を読んでいる方の中にも、「ホスラブを使ったことがある」という方がおられるでしょう。
関東版や関西版、東北版、東海版、九州版、沖縄版など、
日本全国地域ごとに分かれているので、自分の地域の掲示板を利用している方が多いです。
2ちゃんねるや爆サイなどの巨大掲示板には劣りますが、ネット掲示板の上位5位以内には入っているとても大きな掲示板で、
屈指の知名度を誇るため、影響力は看過できないと言えるでしょうか。
ただ、ホスラブには年齢制限があり、「18歳以下の人は利用禁止」となっています。
他のネット掲示板と比べて性的な話題が多いことも特徴的で、
キャバ嬢同士の確執から、同僚やライバル店のキャバ嬢の悪口を書いた投稿も多くなっています。
暇つぶしに眺めたり投稿したりするのは良いのですが、1つ使い方を誤ると、とても危険な掲示板です。
2.ネット誹謗中傷とは
ネット誹謗中傷というのは、ネット上で他人を誹謗中傷することです。
たとえば、
などという投稿などがあります。
ネット上では、ほとんどの投稿が匿名で行われます。
そこで、いろんな人が、無責任に身勝手な投稿をするのです。
「バレるはずがない」と思い、面と向かっては到底言えないような酷いことや虚偽を書き込むケースも多いのです。
キャバ嬢も、ホスラブなどのネット掲示板で誹謗中傷被害を受けることが多いので、注意が必要です。
3.キャバ嬢がホスラブでの被害を受ける例
キャバ嬢がホスラブでネット誹謗中傷の被害を受けるとき、どのようなパターンがあるのでしょうか?以下で、ご紹介します。
3-1.誹謗中傷
多いのは、謂われない誹謗中傷です。
たとえば、他のキャバ嬢やライバル店の関係者から
よくあるキャバ嬢のネット誹謗中傷
- 「客と寝ている」
- 「店長のお気に入り」
- 「あの子は枕営業している」
- 「ママの悪口を言っていた」
- 「〇〇はブス、整形している」
- 「黒服と風紀してるから新規客を優先的に付けてもらえる」
など、いろいろな悪口を投稿されることがあります。
このような投稿を同じお店の同僚や経営者などに見られると、
仕事が非常にやりにくくなることがありますし、妙な噂が回ってしまうこともあります。
また、ホスラブはキャバクラの顧客も見ているので
「枕疑惑」を書かれると、変な誘いを受けることもあるかもしれません。
3-2.プライバシー権侵害
もう1つ、怖いのがプライバシー侵害です。
キャバクラで働いている方は、源氏名のみを使い、個人名や住所、連絡先などはすべて伏せていることが普通です。
しかし、嫌がらせで本名や住所、住んでいるマンションの写真などをホスラブに投稿されてしまうケースがあります。
また、過去の卒業アルバムなどの写真を公開されてしまうこともあります。
このような被害を受けたら、いつ何時誰に跡をつけられたり、
監視されたりしているかわからなくなり、普段の生活も不安になってしまうでしょう。
本名をフルネームで晒されてるキャストとかいてビックリするよね。
3-3.ストーカー被害
ホスラブへの投稿がきっかけで、ストーカー被害が発生することもあります。
たとえば、ホスラブに住所やマンションの写真が投稿されたことをきっかけにして、
店の顧客が家に押しかけてきたり待ち伏せされたりするケースなどです。
こうした個人情報に関わる事柄がネット掲示板に投稿されたら、すぐに削除させないと危険が及んでしまいます。
3-4.家族や会社にバレる
もう1つ、よくある問題が、「キャバクラのバイトが家族や会社にバレる」問題です。
キャバ嬢をしている方は、普段は学生であったりOLであったりすることがあり、周囲にバイトを秘密にしている方も多いです。
そんなとき、ホスラブなどの掲示板に氏名や写真などが公開されてしまったら、
それを見た人が「あれ、この子は〇〇さんじゃない?」などと思い、キャバクラのバイトがバレます。
実際に、東京で学生をしていたキャバ嬢の方が、ホスラブへの投稿をきっかけに、実家の家族にキャバクラのバイトがバレて、
すぐに戻ってくるように言われたり、会社に副業がバレて、懲戒に発展したりする事例があります。
周囲にキャバ嬢を秘密にしている方は、ネット誹謗中傷に特に注意が必要です。
闇金ウシジマくんでも似たような場面がありましたね。
4.キャバ嬢へのネット誹謗中傷で犯罪になる?
キャバ嬢に対してネット誹謗中傷が行われたとき、犯罪は成立しないのでしょうか?
以下で、どういった犯罪が成立する可能性があるのか、見てみましょう。
4-1.名誉毀損罪
名誉毀損罪とは
まず、問題になるのは「名誉毀損罪」です。
名誉毀損罪とは、事実を摘示することによって、他人の社会的評価を低下される場合に成立する犯罪です。
ネット上で、何らかの事実を書き込むことにより、人の社会的評価を下げるようなことをすると、名誉毀損罪となります。
たとえば、「あの子は枕営業をしている」とか「あの子は客の悪口を言っていた」などと書き込むと、名誉毀損罪となる可能性があります。
名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金刑になる可能性があります。
源氏名でも名誉毀損になるのか
ところで、キャバ嬢の場合、ネット誹謗中傷をされるときにも「源氏名」で投稿されることがあります。
本名が掲示されず、源氏名であっても、名誉毀損になるのでしょうか?
法律的に、源氏名でも名誉毀損になる可能性はあります。
名誉毀損が成立するためには、「相手を特定」できれば足りるからです。
たとえば、源氏名が「雨音 ケロ美」であった場合、
「クラブ・鳥獣戯画(キャバクラ店の名称)の雨音 ケロ美は、客と寝ている」と書かれたら、誰が見ても「ケロ美」が誰であるか、明らかです。
そのようなときには、「ケロ美」さんに対し、名誉毀損罪が成立します。
確かにこれだけ具体的に書かれるとピンポイント攻撃があからさまだよね。
これに対し、源氏名だけで特定できない場合には、名誉毀損にはなりません。
たとえば、何の前提もなく「ウサギは整形」と書いてあったとしても、
「ウサギ」というキャバ嬢がたくさんいたら、それが誰のことかは分かりません。
前後の投稿から誰のことかがわかれば名誉毀損罪となりますが、そうでもなければ犯罪にはなりません。
真実でも名誉毀損になる
ところで、名誉毀損については、世間で誤解されていることがあります。
それは、「虚偽を書いたら、名誉毀損になる」と思われていることです。
内容が真実なら名誉毀損にならない、と思われているのです。
しかし、実際には、内容が真実であっても名誉毀損となります。
真実でも「人の社会的評価を低下させる内容」であれば、名誉毀損だからです。
たとえば「枕営業している」と書かれた場合、通常は人の社会的評価を低下させる内容と言えます。
そこで、その内容がたとえ真実であっても名誉毀損罪が成立して、犯人を逮捕してもらえる可能性があります。
なんか複雑な気分ですね。
4-2.侮辱罪
ネット誹謗中傷により、「侮辱罪」が成立することもあります。
侮辱罪とは、事実を摘示せずに、公然と人の社会的評価を低下させることです。
つまり、ネット上で、相手を「罵倒」した場合などに侮辱罪となります。
たとえば、「ブス」などと書かれた場合には、名誉毀損ではなく侮辱罪が成立します。
侮辱罪の法定刑は、拘留または科料です。
拘留というのは1か月未満の身柄拘束、科料は1万円未満の金銭支払いの刑罰です。
4-3.脅迫罪
ネット上で攻撃を受けたとき、「脅迫罪」が成立するケースもあります。
脅迫罪とは、
を危険にさらすことを示して、脅すときに成立する犯罪です。
実際、キャバ嬢がネット上で脅迫を受けることも大変多いです。
たとえば「殺すぞ」「犯すぞ」「監禁してやる」「家を燃やすぞ」「ペットの犬を攻撃する」「家族に言うぞ」などと書かれることがあるかもしれません。
そのようなときには、投稿者には脅迫罪が成立するので、警察に逮捕してもらえる可能性があります。
脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑です。
4-4.強要罪
強要罪は、相手を脅迫することによって義務のないことを、行われるときに成立する犯罪です。
単に脅迫しただけなら脅迫罪ですが、何らかの行為を強制すると、強要罪となります。
たとえば
- 「店を辞めないと殺すぞ」
- 「それ以上〇〇するなら、無事では済まなくなるぞ、家族にバラすぞ」
などと書き込まれたら、強要罪が成立します。
強要罪には「未遂罪」があります。
未遂罪とは、成功しなくても犯罪が成立するものです。
そこで、ネット上に「店を辞めないと傷つけるぞ」などと書き込まれた場合、その言葉に従わず、店を辞めなかったとしても、強要未遂罪が成立します。
強要罪の法定刑は、3年以下の懲役刑です。
4-5.ストーカー規制法違反
ネット上でしつこくつきまとわれた場合には、ストーカー規制法違反となる可能性もあります。
たとえば、こちらが明確に断っているのに、
しつこく面談などの接触を要求してきたり、
監視していることを臭わせるメールやメッセージを送ってこられたり、
掲示板に書き込まれたりする場合です。
ストーカー被害に遭った場合には、すぐに警察に相談に行きましょう。
警察から相手に対して警告が行われ、警告にも従わない場合、加害者は逮捕されることとなります。
ストーカー規制法違反の法定刑は、被害者が刑事告訴した場合には
「1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」となります。
刑事告訴ではなく、警察や公安委員会による禁止命令を無視して処罰される場合には
「2年以下の懲役または200万円以下の罰金刑」です。
4-6.業務妨害罪
キャバ嬢に対する誹謗中傷が行われたとき、それが「業務妨害罪」となるケースがあります。
キャバ嬢は、営業行為を行っているわけですが、誹謗中傷の噂を広めることによって営業しにくくすると、偽計業務妨害罪となる可能性があります。
虚偽の噂を流したり、人を誘惑したりすることにより、他人の業務を妨害したときに成立する犯罪です。
また、キャバ嬢に対する嫌がらせをした場合には、お店に対する業務妨害罪が成立する可能性もあります。
たとえば、あるキャバ嬢に関して
「あの女にお金をだまし取られた。店ぐるみになっている悪質業者」などと書かれた場合、
店自身が業務妨害の被害を受けたと言えます。
業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
4-7.親告罪について
このように、キャバ嬢に対してネットで誹謗中傷や嫌がらせをしたら、犯人にはいろいろな犯罪が成立する可能性がありますが、
このとき、何もしなくても処罰してもらえるとは限らないので、注意が必要です。
犯罪の中には「親告罪」という種類のものがあるためです。
親告罪とは、「被害者が刑事告訴しないと処罰できない」タイプの犯罪です。
上記で紹介した中では、「名誉毀損罪」と「侮辱罪」が親告罪となっているので、
ホスラブなどで誹謗中傷されたときに、「名誉毀損された」「侮辱された」なら、まずは警察で刑事告訴の手続きをしなければなりません。
また、ストーカー規制法違反のケースでも、早急に警察に動いてほしければ、刑事告訴をした方が効果的です。
まだストーカーなんて言葉が日本に存在してなかった頃の警察の対応は、まだまだでしたね。今はいくらかマシになったのかな?
ストーカー規制法違反には、親告罪となる犯罪とそうでない犯罪がありますが、告訴をするコースの方が、警察が対応しやすいためです。
これに対し、脅迫罪や強要罪、業務妨害罪は親告罪ではないので、刑事告訴をしなくても犯人を処罰してもらうことができます。
ただ、実際には被害者が何も言わなければ、警察が犯罪に気づいてくれない可能性が低いので、ホスラブなどで誹謗中傷被害を受けたら、早めに警察に被害届を提出しましょう。
刑事告訴と被害届の違い
ところで、みなさまは、刑事告訴と被害届の違いについて、よくわからないという方が多いのではないでしょうか?
ここで、その違いを確認しておきましょう。
被害届とは
被害届とは、警察に「このような犯罪被害を受けました」ということを申告することです。
単純に「事実を報告」するだけのことであり、特に被害者の希望や意見などはついていません。
しかし!
これに対し、刑事告訴は、被害者が警察に対して
「このような犯罪被害を受けて、許せないので厳しく処罰して下さい」と求めることです。
つまり、刑事告訴の場合には「厳罰を適用して下さい」という被害者の希望がついています。
その分、加害者は厳しく処罰されることになります。
同じ犯罪被害を受けたケースであっても、刑事告訴した方が警察も真剣に対応しますし、加害者に対する刑罰も重くなります。
名誉毀損罪のように、刑事告訴しないと処罰できない犯罪もありますから、
ネット誹謗中傷を受けて「許せない」と思うなら、単に被害届を提出するだけではなく、
刑事告訴も遭わせて行うことをお勧めします。
5.損害賠償について
ここまでお読みになった方は「あれっ、ネット誹謗中傷されたとき、相手が処罰されるとしても、慰謝料はどうなるの?慰謝料を払ってもらえないのだろうか?」
と疑問を持たれた方がいるかもしれません。
実は、相手に処罰を受けさせる手続きと、相手に慰謝料請求する手続きは別です。
刑事告訴や被害届によって相手が警察に逮捕されたり、裁判所で有罪判決を受けたりしても、被害者の手元には慰謝料は入ってきません。
被害者としては、犯人に対し、刑事告訴や被害届とは別に「慰謝料請求」の手続きをしなければなりません。
以下では、その方法をご紹介します。
5-1.慰謝料が発生する理由
まずは、ネットで誹謗中傷をされたとき、どうして慰謝料が発生するのか、その理由を確認しましょう。
ネットで誹謗中傷すると、被害者は大きな精神的苦痛を受けます。
たとえば、名誉を汚された場合、プライバシーを公開されたとき、ストーカー被害を受けたとき、脅迫されたとき、いずれも非常に嫌な思いをするものです。
酷い嫌がらせを受けたキャバ嬢の方の中には、うつ病になってしまって仕事を続けられなくなる方もいらっしゃいます。
このような強い精神的苦痛は、被害者に発生した「損害」と言えます。
そして、ネット誹謗中傷行為は、法律に違反する「違法行為」です。
そこで、加害者には、民法上の「不法行為」が成立するので、
被害者は加害者に対し、「不法行為にもとづく損害賠償請求」ができるのです。
それが、慰謝料請求の正体です。
また、被害者がうつ病になって病院に行かなければならなくなったケースには「治療費」も損害となりますし、
業務妨害によって売り上げが低下してしまった場合には、売り上げ低下分も損害となります。
以上のようなことから、キャバ嬢の方がネット誹謗中傷被害を受けた場合には、
慰謝料や治療費、休業損害、売り気低下分などの損害を、まとめて不法行為にもとづいて、賠償請求することが可能となります。
5-2.犯人を特定する
それでは、ネット誹謗中傷被害を受けたとき、どのような方法で慰謝料請求することができるのでしょうか?
まずは、相手を特定しなければなりません。
この時点で疑心暗鬼ですよね。客か?黒服か?はたまた仲良しの同僚か?
ネット上の投稿は、ほとんどのケースにおいて、匿名で行われているため、犯人が誰か分からないと、慰謝料請求する相手が判明しないからです。
ただ、ネット上の投稿の犯人を特定することは、簡単ではありません。
まずはサイトの管理者に対して犯人に関する情報開示を求めますが、管理者が情報開示に応じることは少ないからです。
サイト管理者が情報を開示しない場合には、裁判所での手続きが必要となります。
その手続きを「仮処分」と言います。
仮処分は、裁判をする前に、仮に何らかの地位を認めてもらう手続きです。
判決前に、早期に情報を開示させないと被害者の権利が守られないので、裁判所に申し立てをして、サイト管理者に対する情報開示命令を出してもらうことができるのです。
Twitter(現、X)見てると増えたよね。開示請求したよ!っていう報告ポスト。かました側としては、ふるえて眠れ!って気分だろうね。
仮処分をするときには、法律的な要件を記載した「申立書」を作成し、ネット誹謗中傷被害を受けているという証拠を提示する必要があります。
サイト管理者から情報が開示されると、その情報を元にして犯人の経由プロバイダを特定します。
そして、プロバイダに対して裁判を起こし、犯人の氏名や住所、メールアドレスなどの情報を開示させます。
このように、ネット投稿の犯人を特定するのは、かなり大変な作業となります。
専門的な手続きなので、難しければ弁護士に依頼すると良いでしょう。
5-3.内容証明郵便を送付する
犯人を特定できたら、いよいよ相手に対して請求を行います。
このとき、犯人の住所宛に「内容証明郵便」による慰謝料請求書を送ることをお勧めします。
内容証明郵便とは、郵便局と差出人の手元に相手に送付したものと同じ内容の書類が残る郵便です。
内容証明郵便を利用すると、相手にこちらの「本気度」を伝えることができるので、プレッシャーをかけることができます。
また、誹謗中傷の投稿をした犯人は、
まさか自分の正体を知られるとは思っていないことが多いので、突然内容証明郵便が送られてきたら、
驚いて支払いに応じたり謝罪したりすることもあります。
5-4.交渉する
内容証明郵便を送付したら、その後、犯人との間で、慰謝料やその他の賠償金の金額についての交渉をしなければなりません。
金額について折り合いがつけば、その内容で合意ができるので、「合意書」を作成して、支払いを受けましょう。
5-5.裁判をする
もし、話合いをしても金額について合意ができない場合や、相手が逃げてしまって話ができない場合などには、
「損害賠償請求訴訟」という裁判を起こす必要があります。
裁判で勝訴すれば、裁判所が相手に対して慰謝料やその他の賠償金の支払い命令を書いてくれます。
相手が判決に従わない場合には、強制執行(差押え)によって慰謝料を回収することも可能です。
口座にお金があればいいけど、ボンビーな人だったらお金になりそうな家財道具あたりが押収されるのだろうか?
5-6.慰謝料の金額は、どのくらい?
ネット誹謗中傷被害を受けたとき、慰謝料の金額はどのくらいになるのでしょうか?
多くの場合、10万円~50万円程度になります。
上記で紹介した刑事事件の「名誉毀損罪」の罰金が50万円、
「脅迫罪」の罰金が30万円なので、このあたりの数値が基準となってくるでしょう。
ただし、被害者がうつ病になって働けなくなってしまったケースや、売り上げ低下などの莫大な損失が発生しているケースなどでは、賠償金額がより多額になります。
また、誹謗中傷の投稿が執拗に何度も繰り返された場合、
性的な画像を投稿されるなど悪質な場合などにも慰謝料が増額されます。
慰謝料の金額を決定するときには、だいたいの相場をもとに、個別のケースの事情に応じて増額を検討すると良いでしょう。
6.キャバ嬢がネット誹謗中傷を受けたら記事を削除することが重要!
ネット誹謗中傷被害を受けたとき「記事を削除させる」ことが非常に重要です。
投稿内容が残っていると、その投稿を閲覧する人がどんどん増えてしまいます。
それだけではなく、掲示板の投稿を別の掲示板に転載したり、自分のSNSに引用したりする人もいますし、
SNSのフォロワーがさらにリツイートなどして、情報がどんどん拡散されてしまうからです。
記事を削除させるには、いくつかの方法があるので、以下でご紹介します。
6-1.サイトの管理者に削除を求める
もっとも手っ取り早く記事を対応する方法は、自分でサイトの管理者に直接連絡を入れて、削除を求める方法です。
たとえばホスラブなどの掲示板には
- 「削除依頼フォーム」
- 「通報フォーム」
が用意されています。
ここに、問題の投稿を提示して、「何が問題なのか」「なぜ削除が必要なのか」という理由を記載して送信すると、サイト管理者が削除の要否を判断します。
結果として、削除が必要だという判断になると、投稿内容やスレッドを削除してもらうことができます。
削除依頼フォームを利用するときには、いくつか注意点があります。
1つは、わかりやすく問題点を指摘することです。
ネット上の誹謗中傷の投稿は、被害者にとっては
「明らかに権利侵害」と思われるものであっても、第三者からすると「何が問題か分からない」ことが多いためです。
たとえば、プライバシー権を侵害していること、誹謗中傷内容となっていること、
自分に対する脅しの内容になっていることなど、
どういった権利侵害が起こっているのか、具体的にわかりやすく説明しましょう。
参考までに、ホスラブの利用規約では、以下のような内容の投稿が禁止されています。
そこで、上記のような内容の投稿が行われていると言うことができれば、削除に応じてもらえる可能性が高くなります。
また、ホスラブの削除ガイドラインでは、以下のような投稿があると、削除に応じるとしています。
- 電話番号
- 誹謗中傷
- 私生活の情報
- 個人名・住所・所属
- メールアドレス・ホスト情報
そこで、上記のどの問題に該当するかを具体的に示して削除依頼を出すと、削除に応じてもらいやすくなります。
削除依頼を出すと、96時間以内に削除の判断が行われて、削除されるものなら削除されます。
一度削除依頼を送信したら、何度も督促せずに、4日間は様子を見ましょう。
また、削除されてしまうと、問題の投稿が消えてしまい、「証拠」がなくなってしまいます。
後に刑事告訴や損害賠償請求(慰謝料請求)をするためには証拠が必要ですので、
削除依頼を出す前には、画面の写真を撮っておいたりスクリーンショットを残しておいたりすることが必要です。
6-2.仮処分を申し立てる
削除依頼フォームを利用する方法では削除に応じてもらえなかった場合にも、対応方法があります。
この場合、犯人を特定するときに使ったのと同じ、裁判所の「仮処分」という手続きを利用します。
裁判所に仮処分を申し立てると、裁判所からサイトの管理者に対し「記事の削除命令」が出ます。
ホスラブなどの管理者は、裁判所の命令には従いますので、仮処分に成功すると、問題の投稿を削除させることができます。
6-3.ネット誹謗中傷対策業者はNG
ところで、ネット誹謗中傷を受けたときに対処方法を検索していると「ネット誹謗中傷対策業者」が見つかることがあります。
ネット誹謗中傷対策業者とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
これは、弁護士などの資格はないけれども、記事の削除請求を代行している業者です。
削除できない場合には、「逆SEO」(エス・イー・オー)と言って、記事の検索順位を下げる対策などを行います。
SEOってのは、Search Engine Optimizationの略で「検索エンジン最適化」を意味します。要はGoogleの検索順位を上げるための、さまざまな施策を意味します。
しかし、ホスラブの誹謗中傷などのケースで、誹謗中傷対策業者を利用すると、非常に危険です。
ネット誹謗中傷対策業者は、弁護士の資格がないので、本来ならば、依頼者の代理人として行動することはできません。
このような無資格な人がホスラブのサイト管理者に削除依頼を出すと、
管理者が「違法行為が行われた」と判断し、大々的に発表してしまうことがあるためです。
そうなると、問題の投稿が炎上してさらに広まってしまうことがありますし、依頼者の方も違法行為の「共犯者扱い」される可能性もあります。
ネット誹謗中傷対策を誰かに依頼するのであれば、ネット誹謗中傷対策業者ではなく、必ず資格を持った弁護士に相談しましょう。
まとめ
今回は、キャバ嬢がネット誹謗中傷被害に遭ったときの対処方法をご紹介しました。
キャバ嬢は、ホスラブなどの掲示板で非常に誹謗中傷被害に遭いやすく、プライバシー権侵害やストーカー被害の標的にもなりやすい立場にあります。
法律を正しく理解して、自分の身を守りましょう!
ネットの書き込みなんて「マジ、ウケるんですけど~」、ワハハウフフと笑い飛ばせるような豪傑女史になりたいものですね。
外部リンク
松本陽子(元弁護士) – 法スマート